米国のローレンス・バークレー国立研究所( Lawrence Berkeley National Laboratory)が、電子タバコの煙(蒸気)には、化学的に有害な​​物質が含まれているという報告を出しています。


電子タバコは、「乾燥させたタバコの葉に火をつけて煙を吸い込む」従来型のタバコとは異なり、「電子タバコ溶液を電子ヒーターで温めて作り出す蒸気を吸い込む」、という手法で成分を肺に送り込みます。

肺に到達するのは通常のタバコで生じる「直火による燃焼煙」ではないのですが、リキッドカートリッジの液体を加熱した蒸気にもやはり有害な物質が含まれている、という事は既に発表されています。


電子タバコが有害である可能性が高いという報告

今回報告を行っているのはローレンス・バークレー国立研究所 /* 米国エネルギー省が管轄する研究所 */ なのですが、既に実際に電子タバコの蒸気に何が含有されているのかを測定した研究が報告されています。

参考記事:電子たばこは「無害」ではない

この記事の実験は、「電子タバコの蒸気から成分を抽出し、培養皿のヒト細胞(全身の空洞細胞・正常上皮細胞)に添加するものでした。そして実験の結果、未処理の細胞と比較すると蒸気から抽出された成分を加えた細胞ではDNA損傷が多く見られ /* 実態はDNA鎖切断などの複数の損傷状態 */ 、細胞死が生じる可能性が高かった、と報告されました。

この有害事象は、電子タバコがニコチンを含まない製品であった場合にも生じている事が確認された、という事です。つまりニコチン以外の有害物質が有るという事になります。

電子タバコでDNA損傷を引き起こしている原因物質と疑われているのは、「ホルムアルデヒド」、「ジアセチル」などで、電子タバコの蒸気中から成分として発見されています。ホルムアルデヒドは電子タバコ溶液を蒸気にする為の加熱過程で発生しているもの、またジアセチルは風味付けの為の香料として使用されているものだそうです。


プロピレングリコールとグリセリン

非常に多くの製品が販売されている電子タバコは、「リキッド・カートリッジ」の液体を加熱して蒸気を作り出しています。それぞれのカートリッジでは、ニコチンの有無、風味・香りなどの為の成分の含有量などは異なっているのですが、ローレンス・バークレー国立研究所の研究者達は多くのリキッドで溶剤の主成分になっている「プロピレングリコール」と「植物性グリセリン」だけを用いて、加熱後の蒸気を分析するという研究を行っています。

その結果は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどを含む31種の有害化合物が高いレベルで検出されたというものです。共通して用いられている溶剤ですので、どの電子タバコのリキッドでも類似の結果が得られるという事になります。

/* ホルムアルデヒドはシックハウス症候群などの原因物質の一つで、刺激性が高いものですが、実は「プロピレングリコール」と「植物性グリセリン」を加熱すると「ホルムアルデヒド」が発生することは既知の事実で、新発見ではありません。*/

またこの研究では、連続使用の場合には後になるほど蒸気の有害物質の含有量が増加する事、電子タバコの清掃を行わずに連続して使用した場合にも、有害物質の発生量が増えてゆく事、熱源が単一の場合(安価な製品に多い)には、複数の熱源を使用する場合よりも有害物質の発生が多い、などの事が報告されています。


そういったわけで、結論は「(カートリッジに使われている溶剤は共通なので)どの電子タバコであっても有害な物質は発生する」という事になっています。実際に電子タバコが無害である、という報告はありません。電子タバコを使用した「喫煙」は、そもそも健康的な習慣とはみなせないものなのです。次の段階としては、未成年者に対する電子タバコ規制の強化が図られる事になるのでしょうか ・・・。

参考記事:米国で電子たばこ販売に年齢制限が設定された




このBlogでは継続的に電子タバコを巡る論争を追っていますが、現状での議論での共通理解は、電子タバコは「無害」なものでは無いが、「喫煙者の禁煙補助の手段としては有益である」、という事になっているようです。 

ちなみに、英国には医療器具としての承認を受けている「Voke」というニコチン吸入器がありますが、これは喘息吸入器の技術に基づいて作られています。

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ぜんそくの吸入器などと同様に息で作動する弁を経由して、ニコチン製剤を吸入する仕組みになっていて、エレクトロニクス製品ではありません。もちろん「何かを燃やす」必要はないので熱は生じません。

医療器具である「Voke」は、タバコを吸っている気分になれる電子タバコとは一線を画しているわけです。そういった事を知っていると、議論の際にも切り分けが簡単になると考えます。