アルツハイマー病の識別は、まだ効果的な治療手法が存在せず、疾患発症の初期段階からの介入による症状の進行抑制が唯一といってもよい対処法であるため、特に重要です。

今回、アルツハイマー病患者の「話し言葉(音声)」を使用して機械的に診断を行うための手法が発表されています。


発表者はトロント・リハビリテーション研究所(Toronto Rehabilitation Institute)の研究者達で、4種類の言語要素の間の関係を評価する事によって、現在専門家達によって使用されている評価ツールよりも高い精度で診断が可能だ、と報告しています。


研究の手法

使用されたのは次の4つの項目です。

意味認知症(semantic impairment)
「過度に単純な言葉を使用するようになる」

音響障害(acoustic impairment)
「通常よりもゆっくり話すようになる」

文法的な障害(syntactic impairmen)
「より単純な構文が用いられるようになる」

情報障害(information impairment)
「絵・写真の主要な部分を識別するのが難しい」


鑑別診断の為の新たな手法

実際には、このような言語要因がアルツハイマー病の症状の判別に有用である事はわかっていて、すでに専門家達による認知症の診断にも使用されています。

ですが、今回の発表を行った研究者達は「コンピューター・サイエンス学部(機械科学学部)」の方々です。自分達の専門性をいかんなく発揮し、認知症患者達と認知症ではない人達から得られた音響サンプルのデータ分析を行う事によって、その変化を定量化しています。

そして彼らは、音声データをコンピューターにかけると、その声の持ち主がアルツハイマー病で有るか否か、という事が自動で診断できるようにシステムを組み上げたのです。

既にアルツハイマー病だと診断されている人達とアルツハイマー病ではない対照群の人達に対して行われたそのシステムの実験では、専門医によってアルツハイマー病だと診断された人達を判別出来た精度は「82%」だったそうです。

念のために付け加えるとこれは現在人間が行っている初期診断の精度よりも高い数字です。とても有望だ、という事になります。



膨大な処理には「自動化」を

研究者達はこれを「初期段階の認知症のスクリーニング」に使用する事を目指しているそうです。

高齢化に伴って認知症の患者は激増しています。/* 本質は脳の老化に伴う代謝の劣化で生じている、神経細胞の喪失と考えるとわかりやすいです */ 

その為、初期段階での精度の高い診断によって、治療を開始する事は「症状の進んだ認知症患者」を減らす為にもとても重要な事なのです。

この早期診断の為の自動スクリーニングシステムは、有効性を確認する為のテストが開始され、システムの性能の確認が行われる予定になっているそうです。

さて、どういう結果が得られるか ・・・