電子タバコが「禁煙をしようと試みている」人達や、「より低いニコチン濃度に移行しようとしている」喫煙者達には有益であろう、という話は前回紹介しましたが、未成年者への電子タバコの販売が広く州法で規制されている米国で、インターネット上のSNSに抜け穴が作られている、という報告が出ています。


電子タバコと年齢制限

電子タバコは、ニコチンを吸引する為のタバコです。ただそれは「タバコという植物の葉を乾燥させ、燃やした煙を吸い込む」方式ではなく、ニコチン含有液と香料などを混ぜ合わせたを溶液を電気的に加熱して蒸気にして吸い込む、という形でニコチンを吸入させる仕組みをとっています。

これが「喫煙を既に行っている」人達に生じる疾患を減らす方向に働いているようだ、という事は既に報告されているのですが、反面、若い人達、つまり未喫煙者達が安易に喫煙という習慣に手を染める事により、本物のタバコに手を伸ばす入り口になるのではないか、という事も懸念されています

吸引の形態がどんなものであっても、喫煙を習慣づけているのは非常に高い依存性を持つ薬物である「ニコチン」という物質なので、特にいろいろなものに高い感受性を持っている若い人達の脳が急速にタバコ(ニコチン)への依存を確定させてしまう事が懸念されているわけです。

その為米国では、「本物のタバコ」と同様に未成年者への電子タバコの販売を規制する法律がきちんと制定された州がほとんどになっています。


青少年で急速に伸びている「電子タバコ」の使用

でもそういった形で規制をかけているにも関わらず、実際には中・高校生の間での電子タバコの使用は、2013年から2014年にかけて、使用者が3倍に増えていた事が調査によって明らかにされています。

・・・ さて「年齢規制で入手が制限されている」はずの電子タバコを、彼らがどこから入手しているのか、というのが次の問題になりますが、示唆されたのが、若い人達の間で使用率が高いSNSでの広告出稿による集客、というものでした。

Twitter、Facebook、InstagramといったWebサービスで、電子タバコのベンダーが自社製品の宣伝をしている割合は実際に高く、そういったWebサービスに露出する事で「未成年者による違法な電子タバコの入手」が促進されているのではないか、と強く示唆される状況になっているという話です。


もちろん「年齢認証」は設定されています。

あなたは20歳以上ですか?
  
YES / NO

有名無実である事が知られている手法ですね。


そしてこういう手法で未成年者に違法に販売されている(形式が整えられていても未成年者への販売は違法行為です)電子タバコの販売額は、実は電子タバコ市場の25%~30%という大きな部分を占めている、というのが電子タバコアナリストによる推計として出されているそうです。


未成年者への制限には意味がある

まず倫理的な側面から、既に喫煙人口が減りつつある中で「喫煙という行為の危険性についての判断力が乏しい段階」で依存性を生じさせ、その後の長期間利益を得ようとするなら、非常に悪質な行為と考えられます。

喫煙によって生じる高い依存の発生と、長期的に続けられる喫煙で非常に大きな身体的ダメージが生じる事は既に知られています。でもそういった情報への判断能力は、今回問題視されている中学生・高校生段階ではまだ乏しく、また「自分をクールに見せる」小道具としての電子タバコの存在をイメージさせる宣伝戦略がとられて欲求をかきたてている、という事も指摘されています。悪質です


もちろん、Web上にぽっかりと開いた穴はしっかりふさがれなければなりません。

電子タバコの規制を担当するのは米国食品医薬品局(FDA)ですが、もちろん身体的な悪影響に配慮して設けられている規制を「自主申告による年齢詐称」で突破させる状態は見過ごされないでしょう。

そういった「自己申告を悪用した」電子タバコ業界にも、相応の厳しい規制を、という声が聞こえてきそうな報告です。

オンライン上の違法行為を発見する事は難しいのですが ・・・ 日本も他人事では無いような気がします。