「VRC 207」、「GSKワクチン」、「cAd3-EBO Z」などの名称でよばれているエボラワクチンの、第一次臨床試験報告(早期報告)が出ています。
 

このワクチンは、米国アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases:NIAID)と、英国のグラクソ・スミスクライン社(Glaxo SmithKline:GSK)が、チンパンジーに風邪の症状を引き起こすアデノウイルスを土台にして開発したワクチンです。

正式な呼び名は「チンパンジーアデノウイルスベクターエボラワクチン」で、Chimpanzee Adenovirus 3 expressing Zaire Ebolavirus glycoprotein (cAd3-EBO Z)ですが、短縮形で「GSKワクチン」や「cAd3-EBOワクチン」とも呼ばれます。

このワクチンには「ザイール株」に対応するワクチンと、「ザイール株とスーダン株に対応する二価ワクチン」があり、両方の早期報告が出ています。


早期報告:オックスフォード大学

このワクチンはエボラウイルスザイール株に対応するワクチンで、第一次臨床試験はオックスフォード大学が主導して英国で実施されています。

第一次臨床試験は単回投与で、低用量(1×1010)、中用量(2.5×1010)、高用量(5×1010)の三種類のワクチンにに20人ずつの被験者が割り当てられています。そして生じた免疫反応の程度は投与されたワクチンの量に依存していた、と報告されました。

そして第一相で確認すべき要の「安全性」ですが、どの用量のグループでも安全性の問題は報告されていません。

また、高用量グループでは全ての接種者でT細胞・抗体の両方が見られています。T細胞による防御は「継続的な防御」が期待できるという事を意味します。とても心強い報告です。ただそれはマカクを使用した動物実験で得られたレベルよりも低いレベルだった、とされています。



早期報告:米国NIH・NIAID

二価(ザイール株とスーダン株に対応する)ワクチンの第一相臨床試験は、NIHのワクチン研究センターとNIAIDの臨床センターで行われ、「2×1010」用量と「2×1011」用量を、25歳から50歳までの年齢の被験者達、男性9人女性11人の合わせて20人に対して、10人ずつ三角筋への筋肉注射で投与しました。

安全性で問題になる状況は出ていません。熱が出た人が2人いましたが、一過性で消えています。

エボラウイルスの糖タンパク質に特異的に結びつく「抗体」は、被験者20人全員で誘導されています。接種後4週間が経過した時点で、エボラウイルスザイール株に対して90%から100%、と報告されました。

ワクチン抗原に対応する細胞傷害性T細胞などが作り出された事が確認されましたが、それが実際にどのレベルの保護を与えるのかは現時点では不明だと報告されました。

参考情報:エボラ出血熱で研究が進んでいる「ワクチン」について




論文情報
論文誌:NEJM

A Monovalent Chimpanzee Adenovirus Ebola Vaccine — Preliminary Report
T. Rampling and Others
Published Online: January 28, 2015 
(DOI: 10.1056/NEJMoa1411627)
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1411627

 
Chimpanzee Adenovirus Vector Ebola Vaccine — Preliminary Report
J.E. Ledgerwood and Others
Published Online: November 26, 2014
 (DOI: 10.1056/NEJMoa1410863)
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1410863