オックスフォード大学から、現在初期解析が進んでいる「回復期血漿を使ったエボラ臨床試験」についての短報が出ています。

現時点では、まだ有効性が確保できているデータは利用できないそうですが、臨床試験の概要が提供されています。

 

概要(HTML)
The use of Ebola Convalescent Plasma to treat Ebola Virus Disease in resource constrained settings: A perspective from the field
Clin Infect Dis. (2015)
doi: 10.1093/cid/civ680
First published online: August 10, 2015
http://cid.oxfordjournals.org/content/early/2015/08/10/cid.civ680.abstract

全文(PDF)
http://cid.oxfordjournals.org/content/early/2015/08/10/cid.civ680.full.pdf+html

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臨床試験の状況

実施国:ギニア・リベリア・シエラレオネ

  • 西アフリカ三国全てで臨床試験が行われたが、登録者が多かったのはギニアのコナクリの治療センターで、2015年7月7日までに102人が被験者になっている。
  • シエラレオネでは「Ebola-CP trial」、リベリアでは「EVD001 trial」として、それぞれ臨床試験が実施されているが、参加した被験者は少数にとどまっている。

/* エボラ治癒者達の血液を使った臨床試験については、既に「回復期血清の臨床試験 まもなく報告」、という記事を出しています。

この、アントワープ熱帯医学研究所(Antwerp Institute of Tropical Medicine)が主導して、ギニアの首都であるコナクリで実施されていた臨床試験は、7月21日の報告時の101人からさらに参加者が増えているようです。

また新たに血漿を使用した臨床試験が開始されたシエラレオネでも、臨床試験の参加者が得られた事が記述からわかります。*/

  • 臨床試験は、三国全てで「非無作為化比較臨床試験(non-randomized comparative clinical trials)」として実施されました。
  • 臨床試験で重篤な副作用は出ていません。


実際のデータはまだ出ていません

臨床試験からは、まだ評価の為に利用できるデータは得られていませんが、治療現場での臨床経験は「エボラ回復期の患者から提供された血清(Ebola Convalescent Plasma:CP)」がエボラ治療で安全かつ忍容性が良い状況で利用でき、実際にそれが「エボラ治療」として実現可能な手法だ、という事を示唆しています。

もちろん、臨床試験によって実際に血漿による治療での有効性が得られたのかどうか、という事は「臨床試験以外の治療実績との比較」などによってきちんと判定される必要があります。

また、より大きな集団での実際の効果の検証なども必要とされます。ですから、今回得られた結果だけで結論を出せるわけではありません。まだ検証はつづけなければならないのです。

ですが、エボラ出血熱が実際に流行している状況で調達可能な「エボラ治癒者の血液」は、エボラウイルスに対抗する為の「抗体」の最も容易に利用できる源です。効果的な抗ウイルス剤やモノクローナル抗体が得られるまで、エボラ治癒者の血清の持つメリットは精査される事になります。

発行日:Author 2015
米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America)の代理として、オックスフォード大学出版局が(Oxford University Press)これを発行しました。



エボラ回復期血漿による臨床試験の報告は、ギニアでのファビピラビル・アビガンに続く2例目になります。

この情報には次の早期報告での発表内容を読み取れるデータはありません。ネズミ穴の見張りは続きます。