シエラレオネでエボラ出血熱を発症した事が伝えらえていた匿名のボランティアは、危険な感染症患者の搬送を請け負うフェニックス航空の医療ジェット機によって、無事に米国に到着し、メリーランド州にある米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の感染症施設に入院しました。

参考記事:11人目のエボラ患者がNIHに入院した


今日はそれに引き続いて、「エボラ患者との密接な接触が有ったと考えらえる人達」と「同じような状況下でエボラウイルス感染の可能性が有ったと考えられる人達」が米国に移送される、と発表されています。

US evacuates 10 aid workers from Sierra Leone
14 March 2015
http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-31888030



全員未発症

まず。現在すでに米国での治療が開始されている患者を除いて、エボラ感染のリスクがあるとされている人達は、全員未発症の状態です。誰からもエボラ陽性反応は出ていません。

米国にいるエボラ患者は、医療従事者だそうです。そうなると、勤務の関係上同僚の医療従事者達が「同じ感染危険性が存在している場面」を共有した可能性は否定できません。

すでにCDCは、エボラウイルスの感染が発生した経緯を調査し、感染者との接触が疑われる人達を確定する為に調査チームをシエラレオネに派遣したそうです。

念のためという事もあって、当初疑いがあるとされた10人の人達は全員米国に帰国し、そのうちの一人は既にエモリー大学病院の隔離施設に入院し、万が一の発症が起きた場合に備える為に、残りの人達も治療施設の近くに現在待機している、と報じられています。


入院患者は「深刻」な状態

米国で治療を受ける11人目のエボラ患者になったその人については、情報はほとんど出ていませんが、その容体が「深刻な状態」だという事は報じられています。

今回は、治療についてパッタリと情報が止まっています。昨日のForbsの記事では、もしかしたらZmappの無作為臨床試験の実施が始まっている事によって、米国のエボラ患者は「ZMapp」投与を受けられないかもしれない、とも報じられているだけに非常に不安です。

エボラ治癒者からの輸血を受けた、という報道さえも、未だにありません。

もちろん、世界でも最高の水準の対応が可能な施設で治療が行われてはいるのです。でも ・・・ 出来る事はすべて行う、では無い場合に状況がどうなるのか、不安を感じます。まして、患者のご家族はどんな思いだろうか、と胸が痛みます。

エボラ出血熱の症状の進行は、現在のところ止めようがありません。疾患からの回復は、実際には「患者の免疫系の活性化」でしか達成されないのです。


ギニアでの「強い不信」

リベリアでのエボラゼロという喜ばしい報道から一転、現在の報道は「治療が行われているエボラ患者」を巡るものに移りました。

その多くの記事の中に、CDCの所長であるフリーデン博士(Dr. Thomas Frieden)のコメントがありました。フリーデン博士は、最近ギニアでのエボラ出血熱の状況を視察し、ギニアでの流行の終結は遠い、という感触を得た、とコメントしています。

それは、「ギニアの人達が、エボラが実在している深刻な病気だと納得していない」、「援助関係者や治療施設に対して強い疑いを持っている」、などの状況によって引き起こされているそうです。

食事に毒が含まれていると疑って、食べない人達がエボラ治療センターの中にいた、とフリーデン博士は語っています。不審は非常に強い、という事です。


エボラが風土病化する懸念

そういった状況で、ギニアの保健当局が実際のエボラ出血熱の発生状況を正確にとらえている、などと考える事はできません。つまりおそらくギニアには「隠されているエボラ」が多数存在しているのです。

それは死者から採取された試料の分析で、「地域社会でのエボラ死者」が多数発見されている事からもうかがえます。

即効性のある対策はありません。CDCは、疫学者をギニアに派遣し、感染者の発見、接触可能性者の追跡といった事を行える人達をトレーニング中だそうですが、効果が得られるには少し長い時間が必要です。

やはり、エボラ出血熱がギニアで風土病化し、定期的に流行が繰り返されるという悪夢を避ける為にも、地域社会からの「信頼」を得てその協力の元にエボラ対策を進める事が必須のようです。

間もなく、ギニアには人の行き来を困難にする雨季がやってきます。エボラが地域社会に居座る状況は、ぜひとも避けたいものです。