ノルウエーは、エボラ出血熱の流行国に数百人規模のボランティアを送り出し、現地で英国と協力してエボラ対策を実施している国です。

そして実は、ノルウエーでは既にエボラ出血熱の患者の治療が行われています。

ノルウエーのオスロ大学病院は、2014年10月に国境なき医師団(MSF)の為に活動していた30歳の女性がエボラウイルスに感染して、本国に緊急搬送されて治療を受けた事例で、無事に治癒させた実績を持つのです。

参考記事:ノルウェーのエボラ感染者の状況


そして今日の地元紙は、再び「エボラ感染疑い事例」が発生した事を伝えています。

3/9追記:エボラ出血熱のテストは陰性
念のためあと数日は経過観察を行うそうです。よかったですね。


ZMabの使用が報じられた第一事例

Silje Lehne Michalsenという30歳の女性医師は、シエラレオネの地方都市にある、国境なき医師団によって開設されたエボラ治療センターで勤務していました。

感染の経過は不明なのですが、シエラレオネでエボラ出血熱の発症が確認されてノルウエー本国に緊急搬送され、10月7日にオスロ大学病院に入院して治療が開始されています。

治療経過はプライバシーを尊重するという事でほとんど報道されませんでしたが、10月13日には回復の兆しが見え、10月20日にエボラウイルスが確認されない状態に完治して、退院の運びになっています。

この事例は、シエラレオネでエボラ出血熱の発症が確認された段階での搬送でしたが、その後に「ZMa」という抗体医薬が投与された事が明かされています。


/* 「ZMab」は、「ZMapp」の一世代前の抗体医薬で、PHAC(カナダ公衆衛生庁)によって開発されました。

治療が行われた2014年の秋の段階では、「ノルウェーの規制当局は2種類の実験的薬物に許可を与えた」という形で、実験的薬物の使用許可は出ていました。

治療当時は、より新しい世代になる「ZMapp」が既に在庫切れだと報じられていました。今回の事例でもし発症が確認されたなら、「ZMapp」が投与される可能性があります。 */


疑い事例

今回の患者は「現在確定診断が行われている」段階だそうです。

もちろん、エボラ出血熱患者である事を前提にして、医療システムを運用している、と今回の疑い事例を担当しているベルゲンのHauke​​land大学病院の広報責任者はコメントしています。

「市民にはエボラウイルス感染の危険は存在しないので、状況を静かに見守ってほしい」というのが、ベルゲン市の感染症担当者が出したコメントです。

サンプルの確定試験は明日には確定する、と発表されました。


西アフリカでエボラ出血熱の治療に携わったボランティア達の「エボラ出血熱疑い事例」は、多く報道されていますが、幸いにも発症者はほとんど出ていません。


疑い事例でも「予防」が行われる

先に記事にした「エボラ針刺し事故」の事例では、強い感染の疑いが生じた事例では、早期にエボラウイルスに感染している事を前提にした治療が開始されている事が明らかにされています。

関連記事:エボラ出血熱と針刺し事故


まあ、「医療事故」ではなく、日本でのエボラ疑い患者の状況を見てもわかるように「帰国後の発熱」でも今回のような報道はあります。医療事故では無い場合、時期的には「インフルエンザ」という事例が、エボラ出血熱の初期段階の症状と同様の経過をみせるからです。

でも、最悪の状況である「エボラ出血熱の発症」に備えて迅速な対応を開始する事は必須です。


より多くの選択肢

昨年秋の段階に比べて、現在はエボラ出血熱と闘う為の武器も増えています。その当時「効果は不明」とされていた様々な実験的な治療手法も、その後の治療実績の蓄積によって、一定の効果の確認が進んできたのです。

今回の事例では、既に事後ワクチンと抗ウイルス薬の投与が行われているはずですし、エボラ治癒者も同国には存在していますので、血液型が合えば輸血も可能です。WHOのネットワークで他国からの提供も受けられます。

/* エボラ出血熱の治療では時間が重要な要素である為、疑いが強い場合には予防的な投与が考えられます。

既にファビピラビル・アビガンのギニアでの臨床試験では「有望」な結果が得られていますので、投与は開始されているでしょう。

それを行わない医療関係者( 科学的な有効性を厳密に確認する事を求める科学者とは別種だと考えてください) は存在しません。 */


でも。この事例はエボラ出血熱感染事例では無い事が明らかになる可能性もあります。今の段階はあくまで「疑い」です。

疑いが晴れた場合には、記事上部に情報が掲載されます。あと半日ほど、情報をまつ待機状態が続きます。「エボラ陰性」という情報が待たれます。